早速だが、あなたはこちらのCMを見たことがあるだろうか?
これは、ソースネクストが販売する翻訳機「ポケトーク」のCM・服屋編(30秒)である。
内容は、ポケトークを使って、明石家さんまさんが外国人から6か国語※で”出っ歯いじり”をされる、というもの。
※英語・中国語・タイ語・イタリア語・ロシア語・アラビア語
”お笑い怪獣”ことさんまさんのパワーを存分に使ってポケトークの性能を強調した面白いCMだ。
さんまさんの「襟が高くて、歯に当たらへん?」という関西弁のボケまで正確に翻訳できているように見える。
さて、このCMを見てあなたはどうお感じになっただろうか?
こんなにたくさんの言語を正確に翻訳できるなんてすごい!まさに夢の通訳機だ!
と思った方。
我々はそんな素直なあなたが大好きだ。その子供のような純粋な心をこれからも貫いて行って欲しい。
一方、我々トライ翻訳機編集部一同は、
これ、誇大広告じゃないの?いくらなんでもここまで正確に翻訳できないでしょ?
と思ってしまった。
そう、編集部の面々は今まで色々な人を信じては騙され、すっかり汚れてしまった大人の集まりなのだ。
いい話を聞いても、「この世の中そんなうまい話はあるはずがない」と疑ってかかる癖がついてしまっているのである。
そこで今回編集部では、ポケトークを使い、本当にこのCMが再現できるのか検証してみることにした。
- ポケトークって本当に役に立つの?
とお考えになっている方の参考に、少しだけなるかもしれない。
予算はないぞ!どうやって検証する?
ところで、編集長は悩んでいた…
「さんまさんのポケトークCM、再現できる?ポケトークで試してみた」という企画を通してみたものの、
この企画、どうやって実現したらいいだろうか?
このCMを再現するには、英語・中国語・タイ語・イタリア語・ロシア語を話せる人を探さなければならない。
もちろん、クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトで探せば、すぐに協力してくれる方は見つかるだろう。
雑誌「家電批評」さんや「モノクロ」さんなどのの記事でよく見るように、その道のプロである”識者”の方々を集めて検証を行えば、非常に信頼度の高い記事が出来上がるはずだ。
しかし、悲しいことに現在「トライ翻訳機」編集部にそんな予算はない。
翻訳機レビューのための購入費用がかさみ…
今年度これ以上の予算は使えない状況なのである。
ラグビーワールドカップ2019のおかげで、「トライ」という言葉がこれまでにないほどメジャーになったにもかかわらず、「トライ翻訳機」への訪問者数は右肩下がりなのだ。
どうしたものか…
ここで編集長に一つのひらめきが!
そうだ、CMの音声をそのままポケトークに翻訳させてみればいいじゃないか!
そう、ポケトークは”音声”翻訳機。
CMで話している外国語をそのままポケトークに翻訳させることが可能なはずだ。
というわけで、CM動画の音声をそのままポケトークに翻訳させて、CMを再現することができるのか検証することにした。

なんとも地味な絵面である
(手抜きだなんて言わないでほしい。我々は最善を尽くしたのだ。)
ポケトークだけでは面白くないので、ライバルの翻訳機や翻訳アプリでも同じように翻訳して比較してみたぞ!
ポケトークのライバルたち
- arrows hello:実は富士通アローズシリーズが出してる翻訳機
- Langogo(ランゴーゴー):対応言語104でNo.1!なのにマイナー…
- ボイストラ(VoiceTra):純日本製の無料翻訳アプリ
CMの内容
まず、このCMの登場人物を紹介しよう。
(ちなみにイラストも自前だ!イラストレーターを頼む予算ももちろんない!)
登場人物紹介
日本語担当は、言わずと知れた明石家さんまさん。どうやら海外の高級テーラーにスーツを買いに来たようだが、思わぬトラブル?に巻き込まれる。
英語を担当するテーラーの店員さん。登場人物の中でただ一人まともだが、まとも過ぎてさんまさんの渾身のボケをまともに返してしまう。
突如背後から襲い来る、中国語を話すおばさん。一瞬、大阪のおばちゃんと勘違いした方も少なくないだろう。
この人の歯に衣着せぬ発言から、事態は急展開を見せる。
タイ語担当。この人、どっかで見たことがあるぞ!日本語もしゃべっていた気が…
イタリア語担当。どっかで見たことある人2号。あ、思い出した、エアペイのCMでオダギリジョーさんに「じゃ、いいですぅ」って言ってる人だ。
ロシア語担当:さんまさんの歯に恋してしまうロシア美女。この人の登場により、物語はラブロマンスへと変貌する。
アラビア語担当だが、実は登場しただけで、何もしゃべってないおじさん。似顔絵も簡単。
CMの内容は以下の通りだ!
さんまさん「どっちがいいと思う?」
ポケトーク:”Which do you think is better?”(どっちの方がいいと思いますか?)
英語「I recommend this one.」
ポケトーク:”私はこれをお勧めします”
さんまさん「でも襟が高くて歯に当たらへん?」
ポケトーク:”But the collar is too high to hit tooth.”
英語:(うなずく)
さんまさん「当たんのかい…」
中国語「好大的门牙」
ポケトーク:”大きな前歯”
タイ語「ดูแล้วเหมือนไม่ใช่ฟัน.」
ポケトーク:”歯ではないように見えます”
イタリア語「I denti sono quasi come un'arma.」
ポケトーク:”ほとんど武器です”
ロシア語「я влюбилась ваши зубы.」
ポケトーク:”あなたの歯に恋した”
さんまさん:「ありがとう」
ポケトーク:”Thank you.”(ありがとう)
アラビア語:無言
ポケトーク:”その歯が欲しい”
さんまさん:なんでやねん!
以上。
ちなみに当サイトでは、なぜ店員さん以外全員ポケトークを持っているのか?という質問は受け付けていない。
再現してみたぞ!
ようやく本題だ。
このCMの内容を翻訳機で再現できるか試してみたぞ!
使ったのは、以下4種類。
- ポケトーク:今回の主役
- arrows hello(アローズ・ハロー):実は富士通アローズシリーズが出してる翻訳機
- Langogo(ランゴーゴー):対応言語104でNo.1!なのにマイナー…
- ボイストラ(VoiceTra):純日本製の無料翻訳アプリ。意外とすごい。
ポケトークで再現→ほぼ完ぺき!
まずはポケトーク。
CMが再現できなければ、誇大広告のレッテルを貼られることになるが、果たして結果はどうか?
あれ?CMとちょっと違うぞ??というところだけ赤字にしてみた。
さんまさん「どっちがいいと思う?」
:”I think which is better”(私は、どちらが良いか?と思う)
英語「I recommend this one.」
ポケトーク:”私はこれをお勧めします”
さんまさん:「でも襟が高くて歯に当たらへん?」
ポケトーク:”But if your collar is tall and hits your teeth.”(でも、あなたの襟が高くてあなたの歯に当たるなら)
~中略~
中国語「好大的门牙」
ポケトーク:”大きな前歯”
タイ語:「ดูแล้วเหมือนไม่ใช่ฟัน.」
ポケトーク:”歯ではないように見えます”
イタリア語:「I denti sono quasi come un'arma.」
ポケトーク:”歯はほとんど武器のようなものです”
ロシア語:「я влюбилась ваши зубы.」
ポケトーク:”私はあなたの歯に恋をした”
さんまさん:「ありがとう」
ポケトーク:”Thank you.”(ありがとう)
~以下略~
どうだろう?
中国語・タイ語に関してはCMと全く同じ結果になった。
イタリア語・ロシア語は直訳でCMより長い表現になったが、おそらくCMでは30秒以内に収めるために言葉を短くしたのだろう。
問題は冒頭。さんまさんの2つのセリフだ。
「どっちがいいと思う?」という言葉は、CMでは”Which do you think is better?”(どっちの方がいいと思いますか?)
でも再現では、”I think which is better.”(私は、どちらが良いか?と思う)と翻訳された。
相手への質問ではなくなっているが、どちらがいいか迷っていることは伝わるので、これはギリギリOKじゃないだろうか。
もう1つは、「でも襟が高くて歯に当たらへん?」という関西弁の翻訳。
”But if your collar is tall and hits your teeth.”(でも、あなたの襟が高くてあなたの歯に当たるなら)と翻訳されていて、すっかり店員さんの話になってしまっている。
ついに、ポケトークのCMに嘘を発見か!と色めき立つ編集部。
しかし、実はそうではなかった。
よく聞いてみると、CMでもこのセリフはうまく翻訳されていないのだ。
”But the collar is too high to hit tooth.”(でも、襟は歯に当たるには高すぎます)というめちゃくちゃな翻訳になっている。
でも2つの方法で、正しく翻訳できていないのをうまくごまかしている。
ポケトークCMのトリック
- このセリフの場面であえてポケトークの画面を見せていない。
- この翻訳を聞いた店員さんの反応も”うなずく”だけ、という微妙な反応にしている。
つまりこのCMは、「うまく翻訳できない文章もあることを正直に見せながら、ほとんどの人がそのことに気づかず、ポケトークのすごさだけに注目する」ように作られている。
恐るべきCMである。

出番が少ないので出てきたおじさん
結論として、ポケトークのCMはポケトークで完全に再現はできないものの、決して誇大広告ではない。ということが分かった。
では、他の翻訳機ではどうなるだろう?
arrows helloで再現→関西弁が通じない…タイ語も??
さんまさん「どっちがいいと思う?」
arrows hello:”which do you think is better?”(どっちがいいと思う?)
英語「I recommend this one.」
arrows hello:”これをお勧めします”
さんまさん「でも襟が高くて歯に当たらへん?」
arrows hello:”But if the collar is too high, I can't reach it.”(でも、襟が高過ぎると届きません)
~中略~
中国語「好大的门牙」
arrows hello:”大きな前歯だ”
タイ語「ดูแล้วเหมือนไม่ใช่ฟัน.」
arrows hello:”トラブルに見えない”
イタリア語「I denti sono quasi come un'arma.」
arrows hello:”歯はほとんど武器のようだ”
ロシア語:「я влюбилась ваши зубы.」
arrows hello:”わたしはあなたの歯に恋に落ちた”
さんまさん:「ありがとう」
arrows hello:”Thank you.”(ありがとう)
~以下略~
arrows helloでは、中国語・イタリア語・ロシア語に関しては問題ない結果になった。
さんまさんの冒頭のセリフも正しく翻訳できている。
ロシア語の翻訳は、”私はあなたの歯に恋に落ちた”となっていて、ポケトークよりもロマンチック?な表現だ。
問題はタイ語。「歯ではないように見える」と言うべきところが、「トラブルに見えない」という翻訳になってしまった。
これではさんまさんから
と言われてしまうことは間違いないだろう。
さらに、arrows helloは関西弁をうまく聞き取ることができず、「でも、襟が高くて歯に当たらへん?」を”でも襟が高くてはにあたらへん”と認識。
結果として、”But if the collar is too high, I can't reach it.”(でも襟が高過ぎると、届きません)という意味不明の翻訳になった。
Langogoで再現→やっぱりタイ語が??
さんまさん「どっちがいいと思う?」
Langogo:”I think which is better”(私は、どちらが良いか?と思う)
英語「I recommend this one.」
Langogo:”これをお勧めします”
さんまさん「でも襟が高くて歯に当たらへん?」
Langogo:”But the collar is high and hits your teeth,it's not good.”(でも、襟が高くてあなたの歯に当たるので、良くないです)
~中略~
中国語「好大的门牙」
Langogo:”大きな前歯”
タイ語「ดูแล้วเหมือนไม่ใช่ฟัน.」
Langogo:”歯が見えないみたい”
イタリア語「I denti sono quasi come un'arma.」
Langogo:”歯はほとんど武器のようです”
ロシア語「я влюбилась ваши зубы.」
Langogo:”わたしはあなたの歯に恋に落ちた”
さんまさん「ありがとう」
Langogo:”Thank you.”(ありがとう)
~以下略~
Langogoでも、中国語・イタリア語・ロシア語に関してはarrows helloとほぼ同じで問題ない結果だ。
さんまさんの冒頭のセリフはポケトークの再現と同じでギリギリセーフ。
やはり問題はタイ語で、「歯が見えないみたい」という微妙にずれた翻訳。
そして、関西弁もやっぱり苦手。
正しく聞き取ってくれたものの、”But the collar is high and hits your teeth,it's not good.”(でも、襟が高くてあなたの歯に当たるので、良くないです)と相手の話になってしまった。
ボイストラで再現→歯がしゃべっちゃった
さんまさん「どっちがいいと思う?」
ボイストラ:which do you think is better?”(どっちがいいと思う?)
英語:「I recommend this one.」
ボイストラ:”これをおすすめします”
さんまさん「でも襟が高くて歯に当たらへん?」
ボイストラ:”But the collar is high and touches the teeth.”(でも襟が高くて、歯に当たるんですよ)
~中略~
中国語「好大的门牙」
ボイストラ:”大きな前歯です”
タイ語「ดูแล้วเหมือนไม่ใช่ฟัน.」
ボイストラ:”歯ではないようです”
イタリア語「I denti sono quasi come un'arma.」
ボイストラ:翻訳できない
ロシア語「я влюбилась ваши зубы.」
ボイストラ:”わたしはあなたに恋した歯”
さんまさん「ありがとう」
ボイストラ:”Thank you.”(ありがとう)
~以下略~
ボイストラは、残念ながらイタリア語の音声翻訳に対応していない。
中国語・タイ語は問題なしだったが、ロシア語の翻訳結果は、「わたしはあなたに恋した歯」。
急きょ、登場人物1名追加である。

さんまさんに恋した歯
かなり気持ちの悪いイラストになったことを謹んでお詫びしておきたい。
驚きは、関西弁の翻訳。
「でも襟が高くて歯に当たらへん?」が、”But the collar is high and touches the teeth.”(でも襟が高くて、歯に当たるんですよ)となった。
そのままではないが、さんまさんのボケをかなり正確に拾った翻訳ではないだろうか。
さすが純日本製の翻訳アプリ、といった印象だ。
まとめ:ポケトークのCMに嘘はなかった
いかがだっただろうか?
結果として、ポケトークを使ってさんまさんのCM内容をしっかり再現することができた。
他の翻訳機も使ってみたことで、ポケトークの翻訳精度の高さもお分かりいただけたのではないかと思う。(特にアジア圏の言語が得意!)
当サイトではポケトークのまじめなレビュー記事も用意しているので、よかったら参考にしてみて欲しい。
ちなみに、翻訳エンジンは自動的に学習しているので一定の期間が経つと翻訳結果は変わっていくぞ。
「自分がやってみた翻訳結果と違うじゃないか!」というご意見は受け付けていないのでそこんとこヨロシク。