「ZERO」は、スマホに挿すだけで使える世界最小クラスの翻訳機。
2020年4月4日、クラウドファンディングサイト「Makuake」に公開後、わずか33時間で目標金額の1,000%を突破。
数ある翻訳機の中でも非常に注目度の高い製品です。
でもこの製品、一番気になるのは
- スマホに挿して使うなら、翻訳アプリと何が違う?
- あえてZEROを使うメリットはあるの?
というところじゃないでしょうか?
そこで今回編集部では、Timekettleさんから提供いただいた「ZERO」を実際に使って、Google翻訳アプリと徹底比較してみました。
「ZERO」を購入する価値はあるのか、本音で検証していきます。
翻訳機「ZERO」とは
「ZERO」とは、中国の深センに本拠地を置くスタートアップ企業「Timekettle(タイムケトル)」が開発した、93言語※対応の双方向翻訳機です。
※53のアクセント(方言)を含む
横4×縦1.5×厚さ0.7cmで重量わずか6.5グラムと、おそらく現時点で世界最小の翻訳機ではないかと思います。

ポケトークWと並べてみたところ。ZEROの圧倒的な小ささが分かります
ただ、あまりにも小さいのでこれ単体では使えません。
スマートフォンに取り付けて「Timekettle」アプリを起動することで、翻訳機能が使えるようになります。
端子はLightning(iPhone用)とMicroUSB Type-C(Android端末用)の2種類あり。スマホに取り付けて使うので、ZERO自体の充電は不要です。
使い方は、ZEROをスマートフォンの充電端子に接続するだけ。
スマホに装着すると自動的に「Timekettle」アプリが起動し、翻訳モードに入ります。
翻訳したい言語を選んで話し始めれば、自動的に翻訳開始。
内蔵した4つのマイクで「4方向の音声を自動で聞き分ける”音源分離機能”」を搭載することで、音声認識性能も向上させています。
「会議モード」と「インタビューモード」では、ZEROをボイスレコーダーとして使えます(音声を文字起こししてくれますが、翻訳はできません)。
非常に小さいので持ち運びも楽ですが、無くしてしまわないように付属の磁気収納カードにしまった状態で持ち運ぶのがおすすめです。

磁気収納カードに取り付けても財布にしまえる大きさ
翻訳アプリと何が違う?Google翻訳と比較してみた
さて、ここからは翻訳機ZEROの実力を検証していきます。
「スマートフォンに挿すだけでアプリが起動して翻訳できる」というのがZEROの売りですが、
「それなら翻訳アプリと同じでは?」というのが編集部の正直な感想です。
翻訳機といえば、ポケトークのような「ハンディ型」が一般的。
ハンディ型の翻訳機には、
- スマホを持っていない人でも使える
- スマホと同時に使える
という翻訳アプリにはないメリットがありますが、スマホに装着して使うZEROにはこのメリットがありません。
それなら、無料の翻訳アプリを使った方が、ZEROを買って取り付けるよりいいのでは?
そんな疑問の答えを出すために、Google翻訳とZEROを比較してみました。

Google翻訳アプリ
ZERO(Timekettleアプリ) | Google翻訳 | |
価格 | 税込7,980円(予定) | 無料 |
対応言語数 | 93言語(うち53はアクセントの違い) | 108言語 |
オフライン翻訳 | 有料(Makuake支援者は無料) | 無料 |
機能 | 会話翻訳・テキスト翻訳・会議/インタビューモード※(ボイスレコーダーと文字起こし) | テキスト翻訳・カメラ翻訳・音声翻訳・会話翻訳 |
起動方法 | ZEROをスマホに装着 | アプリを起動するだけ |
翻訳精度 | 検証結果 |
※会議・インタビューモードは600分まで無料(その後1時間100円)
ZEROの販売予定価格は税込み7,980円※ですがGoogle翻訳は無料です。
※下がる可能性あり
対応言語数はGoogle翻訳が108に対して、ZEROは93言語。
ZEROも健闘しているように見えますが、うち53言語は英語・スペイン語など方言対応なので、実質的にはZEROの対応言語は40言語程度といってもいいと思います。

ZEROの対応言語一覧
ZEROはオフライン翻訳にも対応予定ですが、利用するには追加費用がかかる見込み。
Google翻訳ならすべての機能を完全無料で使えるので、この点もGoogle翻訳の方が優れています。
「翻訳」に関する機能の多さや起動方法の手軽さもGoogle翻訳の方が上なので、ここまでの比較ではGoogle翻訳が完全勝利。
とは言っても、翻訳機や翻訳アプリで一番大切なのは翻訳精度(翻訳の正確さ・適切さ)です。
Timekettleの担当者さんによると、
当社ではGoogle,Microsoft,Iflytekを始めとした世界最大手の翻訳エンジンを採用するとともに、AI翻訳専門メーカーとしてそれらの翻訳精度を補うエンジンを自社開発することで、翻訳精度をさらに担保しております。
ということです。
Google翻訳はGoogleの翻訳エンジンだけを使っているので、翻訳精度ではZEROの方が上なのでは?と期待できます。
実際に、ZEROとGoogle翻訳の翻訳精度も比較してみました。
翻訳精度比較
ZERO(Timekettleアプリ)とGoogle翻訳アプリの双方で同じ日本語の文章を英語と中国語に翻訳し、以下の規準で翻訳結果を採点して合計点を比較します。
▼採点基準
5点 | 完璧な翻訳。意味が通じ、なめらかで自然な文章になっている。 |
4点 | 多少不自然な点はあるものの、意味はしっかり通じる。 |
3点 | なんとか全体の意味が理解できる |
2点 | 意味が分かりにくい、一部しか理解できない |
1点 | 意味が分からない |
0点 | そもそも翻訳できない |
※採点は当サイト独自の規準です。
日本語→英語の翻訳精度
まず、日本語の文章を英語に翻訳した場合の翻訳精度を比較します。
例題1:デルタ航空3便ロサンゼルス行きのお客様はただいまより搭乗を開始いたします。
正しい翻訳例Departing passengers on Delta Airlines Flight 003 for Los Angeles are now boarding.
ZERODelta Airlines praise to Los Angeles customers are now available.
ロサンゼルス行きのお客様へのデルタ航空賛美はただいま利用可能です。 1点
Google翻訳Delta flight 3 pasengers to Los Angeles are now boarding.
デルタ航空3便ロサンゼルス行きのお客様はただいま搭乗中です。 4点
評価
ZEROは聞き取りがうまくできず、「デルタ航空賛美ロサンゼルス行のお客様は只今より登場開始いた」と認識されたため、意味の分からない翻訳結果になってしまいました。
Google翻訳の結果からは”開始”が抜けてしまっていますが、意図はだいたい伝わるので4点としました。
例題2:ゴルフをしたいのですが、近くに適当なコースはありますか?
正しい翻訳例I’d like to play golf. Are there any golf courses around here?
ZEROI want to play golf. Is there a suitable course nearby?
ゴルフをしたいです。近くに適切なコースはありますか? 5点
Google翻訳I want to play golf. Is there a suitable course nearby?
ゴルフをしたいです。近くに適切なコースはありますか? 5点
評価
ZEROもGoogle翻訳も同じ結果になりました。意図がしっかり伝わる正確な翻訳です。
翻訳結果が全く同じなので、いまのところZEROでは日本語→英語翻訳にGoogleの翻訳エンジンを利用していると思われます。
日本語→中国語の翻訳精度
次に、日本語の文章を中国語に翻訳した場合の翻訳精度を比較します。
例題1:中国国際航空1209便西安行きのお客様はただいまより搭乗を開始いたします。
正しい翻訳例乘坐飞往西安的中国国际航空1209航班的旅客,现在开始登机了。
ZERO国航12,000Express开往西安。
中国国際航空12,000急便は西安に行きます。 2点
Google翻訳国航飞往西安的1209航班现已登机。
中国国際航空1209便西安行きはすでに搭乗しました。 3点
評価
ZEROは言葉がうまく聞き取れず、「中国国際航空千二百急便西安行きのお客様は只今より登場開始いたします」と認識されてしまったので、意味の分からない翻訳結果になりました。
Google翻訳は正確に聞きとってくれたものの、”お客様”が抜けていたり、”すでに搭乗した”というニュアンスの言葉が使われていたりと翻訳結果はいまいちです。
例題2:8時に予約した佐藤です。すみません、予約を取り消したいのですが。
正しい翻訳例我叫佐藤,八点订了做。对不起,我想取消预订。
ZERO佐藤(Sato)于8点对预订感到抱歉。
佐藤は8時に予約したことを非常に申し訳なく感じています。 2点
Google翻訳佐藤(Sato)于8点对预订感到抱歉。
佐藤は8時に予約したことを非常に申し訳なく感じています。 2点
評価
2つの文に分かれている難題です。(音声翻訳機は句読点を認識できないので、2つ以上の文章の翻訳を苦手としています)
ZEROもGoogle翻訳も同じ結果になりました。どちらも”予約を取り消したい”という意図が伝わらないので2点です。
翻訳結果が全く同じなので、いまのところZEROでは日本語中国語翻訳にGoogleの翻訳エンジンを利用しているようです。
Google翻訳は中国語の翻訳をとても苦手としているので、中国語には別の翻訳エンジンを使った方がいいのでは?と思います。
翻訳精度検証まとめ
ZEROとGoogle翻訳の翻訳精度を比較した結果、採点は以下のようになりました。
![]() |
![]() |
|
英語のフレーズ① | 1点 | 4点 |
英語のフレーズ② | 5点 | 5点 |
中国語のフレーズ① | 2点 | 3点 |
中国語のフレーズ② | 2点 | 2点 |
合計点 | 10点 | 14点 |
ZEROは10点、Google翻訳は14点とZEROの方が低い結果になってしまいました。
ZEROの敗因は、音声認識性能の低さです。
話した言葉を正確に聞き取ってくれないことが多いため、必然的に翻訳結果も間違ったものになってしまいます。
せっかく4つのマイクを搭載しているのに生かせていないのが残念です。
この結果だけですべてを判断できませんが、いまのところ「ZEROの翻訳精度はGoogle翻訳よりも低い」といっていいと思います。
とは言っても、ZEROはまだ発売前の翻訳機。
これから音声認識性能の向上や最適な翻訳エンジンの見極めが進んでいけば、Google翻訳を超える可能性は十分にあるので、期待したいと思います。
まとめ
まとめです。
ZEROの性能は、全体的にGoogle翻訳アプリに負けているので、「性能の良い翻訳機が欲しい」という方には今のところおすすめできません。
とは言っても、ZEROはまだ発売前の翻訳機。
翻訳エンジンの最適化で音声認識性能や翻訳精度が上がってくれば十分使う価値のある翻訳機だと思いますので、今後に期待したいと思います。
ZEROを開発しているTimekettleは他にもイヤホン型の翻訳機「WT2 Plus」を販売中。

Timekettleのイヤホン型翻訳機「WT2 Plus」
他にはない革新的な製品の開発に取り組むTimekettleを応援したい!という方は、ぜひクラウドファンディングサイト「Makuake」でZEROの応援購入をしてみるのはいかがでしょうか?
▼Makuakeの「ZERO」プロジェクトページへ(2020/6/22終了予定)
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